~「i2.JP」4周年に向けて~
ヘルスケア共創のパイオニアとして
「多様性」×「集合知」で「患者中心」の社会実装を実現
日本最大級のヘルスケア・オープンイノベーション・ネットワークとして成長を続ける「i2.JP」。2020年11月の設立から4年近く経過し、パートナー間のビジネスマッチングやPOC(概念実証)が着実に増加している。
パートナーの数だけでなく多様性も増し、オープンイノベーションとしてのパワーが高まる「i2.JP」は、今後どのような形で患者さんへの貢献、社会への貢献を果たすのか?アストラゼネカ代表取締役社長の堀井貴史氏に展望を聞いた。
目指すのは患者さんの医療体験の進化
診断や治療だけでなく
多様なアンメットニーズを解決に導く
――まず「i2.JP」誕生の背景を改めてお聞かせください。
「i2.JP」は、「患者中心の医療の実現」をビジョンに掲げ、ヘルスケア分野における課題解決に取り組むオープンイノベーション・ネットワークとして、2020年11月にアストラゼネカを含む7社・団体で発足しました。
発足から4年近くがたち、ヘルスケア市場を取り巻く環境はさらに変化しています。5G(第5世代移動通信システム)やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などのデジタル技術が進化し、ヘルスケア領域においてもデジタル技術を活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)は欠かせなくなっています。
また、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延を経て、パンデミックや自然災害に対応できる「より強靭な医療システム」が求められています。特に日本は、超高齢化社会や労働人口減少といった問題も相まって、これらの複雑な問題に対応できる医療体制の構築や医療費の削減が喫緊の課題となっています。
様々な課題を解決するには、イノベーションの創出が欠かせません。アストラゼネカは、イノベーション志向の製薬企業として、発症予防から予後管理まで患者さんが病気と歩む全ての過程における医療体験、ひいてはQOLの向上に向けた包括的なヘルスケアソリューションを提供すべく、医薬品の開発・供給のみならず、医療機器との連携やデジタル技術の活用にも積極的に取り組んでいます。しかし、1社だけで実現できることには限りがあります。様々な企業や団体との共創によってイノベーションを生み出し、患者中心の医療を実現するパイオニアとなる――このような考えから生まれたのがオープンイノベーション・ネットワークである「i2.JP」です。
アストラゼネカは世界25か所以上に同様のオープンイノベーション拠点を有しており、「i2.JP」はアストラゼネカが展開するグローバルネットワーク「A.Catalyst Network」の一員でもあります。
――「i2.JP」が目指す「患者中心の医療」とは?
我々は製薬企業ですから、革新的な医薬品を開発・提供することに力を注いでいます。しかし、患者さんのことをより深く理解しようとすればするほど、患者さんの周りに様々なアンメットニーズがあることに気づかされます。患者さんにとっての医療体験は、治療や服薬だけではありません。
症状を自覚して医療機関を受診し、診断・治療を受け、回復に向かっていくまでには、いろいろなフェーズがあります。それぞれのフェーズにおいて、どのような課題があり、どのような解決策が望まれているのか?例えば疾患認知~受診のフェーズなら疾患啓発や受診勧奨のプログラムが、治療中・後なら患者支援のプログラムが期待されます。
各フェーズにおける患者さんの体験の進化を促し、医療体験全体を向上させていこうとするのがアストラゼネカの考える「患者中心」であり、それを様々なステークホルダーと協業しながら実現していくことこそ「i2.JP」の目的です。
医療DXの新たな試み、自治体との共創――
「i2.JP」だから出会える医療の“集合知”
――「i2.JP」の特徴と役割は何でしょうか?
ヘルスケア特化型でありながらヘルスケア領域以外のパートナーも多く、業種や分野の垣根を越えた知恵や技術の“集合知”で新たな価値の創造に挑んでいることが最大の強みであり、「課題を解決しよう」という各パートナーのモチベーションが原動力になっているところが特徴です。
実際、イベントなどでお会いしても、パートナーの皆さんの熱量の高さを強く感じます。日本の医療課題を自分たちのイノベーションで解決していきたいというパッションにより繋がったネットワークが、共創によるイノベーションを加速させるのだと思います。
患者さんを取り巻く環境全体に目を向け、アンメットニーズを捉え、解決策を見いだし、さらにビジネスとして展開していこうと考えると、多様なプレイヤーによるコラボレーションが必要です。課題は数多くありますが、ソリューションを生み出す力と熱量を持つ企業・団体がそれ以上に多くあることを忘れてはいけません。
「i2.JP」を通して、日本には素晴らしいイノベーションが数多くあることを改めて感じることができます。こうしたパートナー同士を結び付けていくことが「i2.JP」の重要な役割の一つだと考えています。
――ビジネスマッチングやPOCが着実に増えています。
現在「i2.JP」には470以上の企業・団体・自治体等が参画しています。パートナー同士のマッチングは、年間100以上にもなり、アストラゼネカとパートナー間でのプロジェクト数も、2023年末までの3年間で70を越えています。
「i2.JP」事務局がハブとなり、パートナー同士を繋ぎ、コラボレーションを創出するしくみも軌道に乗り、アストラゼネカ以外のパートナー間のコラボレーションも増えてきました。イベントや面談を通じて数多くの出会いがあり、それが予想外のプロジェクトを生み、今まで考えもしなかったような課題、ソリューションの発掘に繋がっています。結果として、ヘルスケアの進化に貢献できる企業もどんどん増えています。
――例えばどのようなプロジェクトが実現していますか?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、国内推定有病患者数約530万人iに対して治療を受けている総患者数が約36.2万人ii、未受診・未診断率が高いという課題を持つ疾患です。そこで、アストラゼネカでは通信会社と協働し、同社のデータプラットフォームを活用して、COPDリスクの比較的高い喫煙者に対して疾患啓発を実施し、行動変容を調査するというプロジェクトを実施しました。
ヘルスケア以外の領域で活躍するプレイヤーのチャネルとテクノロジーを活かして疾患啓発を行う。これは、これまでにない画期的なチャレンジでした。ヘルスケアの専門家たちと、デジタルソリューションなど他分野の専門家たちが混ざり合うことで、疾患啓発・行動変容という課題に対して、これまで手掛けられなかったようなパイオニア的アプローチを実現することができました。
新たな視点や切り口で課題解決に臨めるのは、やはり医療をメインとはしていないプレイヤーも関わるからだと思います。まさにオープンイノベーションの力を発揮できた事例で、このような疾患啓発は他の疾患に展開していくことも可能です。
――地方自治体とのコラボ事例も見られます。
慢性腎臓病(CKD)は、アストラゼネカが注力する疾患の一つであり、国内の患者数は推計約1,300万人にのぼりますiii。進行すると人工透析が必要となる場合があり、患者さんとご家族の生活の面でも、国や地方自治体の医療費の面でも、大きな負担を生じる可能性があります。そこで「i2.JP」のパートナーである自治体、データ解析の技術を持つ企業と連携し、国民健康保険特定健診結果のデータを活用した疾患啓発を行うプロジェクトを実施しました。結果として、検査率・治療率をそれぞれ約7%向上することができました。
これは、データを起点としてデータで効果を検証する、イノベーティブなデータヘルスの取り組みであり、自治体、パートナー企業、アストラゼネカの3者にメリットをもたらした点も高く評価できます。また、健診やレセプトデータから潜在患者さんにとって最適な受診勧奨へと導くことで、健診のデータがより価値あるものになります。
COPDやCKDは、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針)において、疾病対策を推進すべき疾患として明記されています。また、「健康日本21」においても、それぞれの疾病対策の目標値が定められており、「第8次医療計画」では施策を講じるべき疾患として、都道府県において取り組みが行われています。今後も、国や地域が優先課題と位置付ける疾患に対して、自治体や「i2.JP」の多種多様なパートナーとタッグを組み、課題解決の一助を担っていきたいと考えています。
ダイバーシティに富むエコシステム
共創の多様性も広がりつつある
――設立から約4年、パートナー数は470まで増え、日本を代表するヘルスケア関連のオープンイノベーションに成長しました。
光栄なことに、医療従事者や医療系企業社員、政府関係者などを対象に独自に実施したオンライン調査において、オープンイノベーション活動に積極的な製薬メーカーとして、アストラゼネカを一番に想起いただけるまでになりました。パートナー数を増やすことが目標ではありませんが、仲間が増えれば増えるほど出会いが増え、コラボレーションの可能性が高まり、イノベーション創出の加速にも繋がります。
また、単に仲間が増えているだけでなく、仲間の多様性が広がっていることもポイントです。例えばIT・データ系の企業は約60社、それぞれに個性的な技術を擁しています。そのほか旅行、ゲーム、不動産、輸送などの業種からも参画があり、“異色”と言えるようなビジネスマッチングも動き始めています。
「i2.JP」は、ダイバーシティに富む一大エコシステムとして成長しつつあり、共創の多様性もさらに広がっていくことが期待できます。
――今後、進むべき方向性は?
これまでは、より多くの仲間を募り、いろいろなプロジェクトに取り組み、ノウハウを蓄積しスケールアップの方法を模索していくフェーズでした。現在は、さらに大きな社会実装と価値創造を目指す新たなフェーズに入っています。数字で見える経済・社会的インパクトを生み出すことも、今後は求められていくでしょう。
社会実装や新たな価値創造に向けて、2~3社間のコラボレーションだけでなく、特定の地域や領域で多彩なステークホルダーを巻き込むようなコンソーシアム型のプロジェクトも出てくると思います。まさに多様性に富む「i2.JP」の腕の見せどころであり、社会の大きな流れをつくっていくことも可能だと考えています。
将来的には、日本発のソリューションを海外に発信することも視野に入れています。例えば日本は高齢化が世界で最も高い水準で進んでいますから、超高齢化に関わるソリューション開発は世界にとっても先進的な事例となり、各国で応用できるかもしれません。スタートアップ企業にとって、「i2.JP」がグローバルアクセスや投資の機会を得る場になればとも思います。
アストラゼネカは、2030年までにグローバルで800億ドルの売上収益を目指すという目標を発表しました。この目標には、「医療の未来を形作り、長期的に成長をけん引する、破壊的イノベーションへの投資も続ける」という文言が添えられています。アストラゼネカの成長には、自社にないアイデアを持つパートナーとのコラボレーション、そしてアストラゼネカが持つ世界中のヘルスケア・イノベーション拠点とも繋がりあっていくことが重要です。
患者さんの医療体験を向上させるのは、様々なステークホルダーによる「集合知」です。「患者さんのためにアンメットニーズの解決に挑もう」という意欲のある皆さん、ぜひ「i2.JP」というネットワークを活用して、アストラゼネカとともに共創の力・イノベーションの力で一緒に社会を変えていきましょう。
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