キービジュアル
コラボ事例
Meracle×マイクロン

シンガポールのスタートアップと
日本のイメージングCRO
コラボの力で吸入薬治療の課題解決を目指す

オープンイノベーション・ネットワークは、多様なソリューションを持つプレイヤーと出会える場ですが、海外のスタートアップにとっては、日本市場参入を図るためのパートナーと出会う場でもあります。

i2.JPにも、自社のソリューションを日本の患者さんに届けたいと考える海外のプレイヤーが参画しています。シンガポールのスタートアップ、Meracle社もその一つです。同社は2024年より、海外の医療機器スタートアップ支援で豊富な実績を持つ株式会社マイクロンとコラボして、自社が開発した吸入補助デバイス「Whizz SpacerTM」の日本市場での導入を図っています。

両社の取り組みについて、Meracle社の創業者でCTOのレイチェル・ホン氏、マイクロン社MedTechセールス事業部の中嶋 眞紀氏、村山 鈴奈氏、
開発推進グループ(薬事担当)の薄 史曉氏にお話を伺いました。

最適なパートナーにめぐり会うには
複数のネットワークの活用を!
決断が確かなものになる

――まず今回のコラボと製品の概要を教えてください。

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レイチェル・ホン(以下、レイチェル):Meracle社は、慢性呼吸器疾患の治療に寄与する吸入補助デバイス「Whizz SpacerTM」を提供するシンガポールのスタートアップです。Whizz SpacerTMの研究・開発はもともとシンガポール国立大学内のプロジェクトとして進めていましたが、より多くの患者さんに届けるために、2018年にMeracle社を立ち上げました。
この製品の最大の特長は、デジタルのスペーサー(吸入補助器具)であり、吸入速度に応じて搭載されたLEDが点灯するため、患者本人だけでなく家族や介護職員がきちんと服用できているかどうかを一目で確認できることです。特に吸入が難しい小児や高齢者の治療において効果が期待できます。モバイルアプリケーションと連動させ服薬データを記録できるため、服薬管理にも役立ちます。

中嶋 眞紀(以下、中嶋):私たちマイクロンは2024年1月よりMeracle社とともに、「Whizz SpacerTM」の日本市場導入・拡大に向けて、日本での製造販売体制の構築や日本向け製品の準備、マーケティング活動などを行っています。2024年10月31日に一般医療機器(クラス1)としてPMDAへの届出を完了、2025年4月の販売を目指して準備を進めているところです。

――日本進出を考えたきっかけは?

レイチェル:コロナ禍で始まった海外のアクセラレーターやインキュベーターのオンライン・プログラムに参加して、海外展開を模索するようになりました。日本を選んだのは距離、文化が近く、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に苦しむ患者さんが多いからです。ヘルスケア分野でデジタル技術が進んでいるということもありました。日本進出はもちろん大きなチャレンジでしたが、政府機関であるシンガポール企業庁(Enterprise Singapore)とJETRO、ヘルスケアに特化したi2.JPなど、サポートしてくれる組織が多数ありました。さまざまなネットワークに参加し、日本についての情報を得たり意見交換をしたりする中で、挑戦してみようという自信が生まれました。
当社に限らず、シンガポールのヘルスケア・スタートアップの日本への関心度は高いと思います。市場が魅力的なことに加え、日本が持つ影響力も大きいからです。私たちがこの先、他国へ展開しようとしたとき、日本で販売されていることがプラスになると考えています。

――コラボに至った経緯を教えてください。

インタビュー写真_02

中嶋:喘息やCOPDに苦しむ患者さんは数多くいますし、この製品について特に魅力に感じたのは「介護者が安心して服薬をサポートできる」点です。私自身、子どもを持つ親なので、患者さんのためだけでなく、子どもが正しく吸入しているのかどうか心配しながら日々のケアをしている保護者の方々のためにも日本に導入したいと思いました。
当社は2005年の設立以来、イメージングCROとして画像診断の分野での経験を基に、プログラム医療機器の日本市場進出への支援を行ってまいりました。しかし、実体がある医療機器で、かつ、患者さんが直接手に取る家庭用医療機器は初めての経験でした。私たちにとって大きなチャレンジでしたが、ぜひサポートしたいと手を挙げました。

レイチェル:日本のパートナーとしてマイクロン社を選んだ一番の理由は、海外の医療機器スタートアップ支援の確かな実績とノウハウがあるからです。図やイラストを使ったコミュニケーションがとても上手なことも同社の素晴らしいところです。私たちがなすべきこと、レギュレーションや市場の違いなどについて、とても明確にわかりやすく説明してくれました。そのおかげで、言語やレギュレーションの違いはあるけれど医療機器という文脈では共通言語を持っている、この製品は必ず日本の患者さんの役に立つと思えるようになりました。

インタビュー写真_03

薄 史曉(以下、薄):海外の企業に、規制に関する最新の情報を分かりやすく提供する。まさに私たちの強みですね。最近はデジタル機器に関するガイドラインや通知が増えていますが、その情報はまだ日本語のみのものが多いため、常に情報を集約・アップデートし、必要なことを迅速にお伝えできるようにしています。
また、当社はSaMDを中心に海外製品のコンサルをこれまでに90件以上、手掛けています。当局と何度も交渉を重ねる中で、当局が求めていることを文書に書かれていないようなところまで理解していますし、当局側からの信頼を得られているとも思っています。

中嶋:セールスの観点では、市場の構造の違いが重要なポイントです。海外では医療機器は一般的にメーカーの販売店が直接、カスタマーに納めることが多いですが、日本の場合、ディーラーがいくつかのレイヤーになっていて、その先にカスタマーがいます。プライシングにも影響するので、そうした違い、ステイクホルダーの関係性などを丁寧にお伝えすることが欠かせません。海外のスタートアップ企業にとっては、当社が関わることでディーラー側の信頼度が上がる点もプラスに働くと思っています。

レイチェル:マイクロン社の強みや経験については、JETROやi2.JPなどからお聞きしました。その情報を踏まえて、「マイクロンが最適なパートナーだ!」と自信を持って決断することができました。スタートアップにとって、いろいろなネットワークに幅広く参加することはとても大切ですね。多様なパートナーとのコラボのチャンスが生まれますし、より多くの情報を得たり、さまざまな人の意見を聞いたりすることで、重要な判断がより確かなものになると思います。

ただ“手をつなぐ”だけではない
アイデアや意見を出し合うことで
製品の完成度も高くなる

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――コラボを通して学んだことを教えてください。

村山 鈴奈(以下、村山):すべてが学びだったと言ってもいいぐらい、多くの学びがありました。先ほどお話ししたように、Whizz SpacerTMは当社にとって初の実体がある家庭用医療機器だったため、輸送、在庫管理、出荷判定――ファーストチャレンジがたくさんあり、レイチェルさんに相談しつつ、また社内の他部署とも協力しながら進めました。

レイチェル:私たちが期待していた以上に、マイクロン社の各チームが積極的にアイデアを出し、うまく連携して、私たちをリードしてくれたと思います。例えばパッケージについても追加すべき情報などをどんどん提案してくれました。最終的なパッケージは私たちの原案とは全く違ったものになっています。

村山:国際基準のリサイクルマークを日本のマークに変えなければならない。しかもサイズ等の規定がある。そうしたことを一つひとつクリアにしていきました。直接、患者さんの手に渡るものなので、マニュアル等もすべて英語を日本語にローカライズした後、わかりやすい表現を目指しました。

レイチェル:そうした小さなことの積み重ねが最終的な製品の完成度を高めることにつながります。2社がただ手をつないで、A社の製品をB社が日本で製造販売する――という単純なストーリーではなく、両社がコラボしてアイデアや意見を出し合うことで、多くの課題を解決した。私たちにとって当初、日本への参入は険しい山のようなものでしたが、最適なパートナーがいれば一歩一歩山を登り、最終的には頂上にたどり着ける。それが、私が得た学びです。

吸入指導の啓発にも積極的に取り組み
患者さんにこの製品のベネフィットを届けたい

インタビュー写真_05

――今後の課題やPR戦略のアイデアは?

村山:まずは吸入指導に積極的に取り組んでいるKOLの先生一人ひとりにお会いして、この製品のよさを知ってもらうとともにフィードバックを得ているところです。

中嶋:吸入指導は喘息、COPDの課題の一つで、課題意識を持つ医師、薬剤師はいますが、なかなかきめ細かく指導しきれていない現状もあります。この製品は吸入指導に役立つものなので、吸入指導の啓発に取り組み、吸入指導を通してこの製品のベネフィットを患者さんに届けられればと思っています。SNSはやはり効果的なPR方法なので、例えば医師向けのクローズドなコミュニティを活用して吸入指導の啓発を行えると、一つのきっかけになるかもしれません。

レイチェル:革新的なデバイスを市場に導入にするには、ビジネスモデルにおいてもイノベーションを生み出さなくてはなりません。特にデジタルデバイスは新しいソリューションなので、医師に情報やデータを届ける方法を考えることがこれからの課題です。また、シンガポールのデータはありますが、いずれ日本のデータを創出・発表したいですね。

――最後に、これからのi2.JPに期待することがあれば教えてください。

薄:多様な国内外の企業の参画がさらに増えるといいですね。当社は画像診断の分野をメインにしていますが、今回のように新たな可能性を探っていますので、診断から治療まで患者さんに役立つ機器を開発しているプレイヤーとたくさん接点を持ちたいです。

中嶋:私が最近、気になっているのはフェムテックです。必ず伸びる分野ですし、一人の女性として健やかに年を重ねられる世界をつくり上げることに貢献できるといいですね。

レイチェル:ビジネスモデルの革新には、先人たちからの学びが欠かせません。私たちが今回のコラボで学んだことも、ほかの誰かのイノベーションを加速できるはずです。先人がヘルスケアのビジネスモデルの革新にどのように取り組み、どのようにして新技術や新製品を患者さんに届けているかの“宝の山”がi2.JPにはあるはずなので、エコシステム全体として過去の事例から学べるような機会をどんどんつくってもらえたらと思います。

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※掲載内容は2025年3月時点のものです。所属等、現在とは異なる場合がございますのであらかじめご了承ください。

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