コラボ事例
OiTr×AZ

卵巣がん疾患啓発プロジェクト(前編)
リスクの高い層に向けトイレサイネージで配信、行動変容を探るアンケートも実施

日本において、卵巣がんは、乳がん、子宮体がんに次いで多い女性特有のがんです。近年、卵巣がんの罹患数は増えつつあり、子宮頸がんよりも多くなっていますが1 、一般的にあまり知られておらず、自覚症状があっても受診されない場合もあるのが現状です。
そこで、アストラゼネカと、個室トイレで生理用ナプキンの無料配布サービスを提供するOiTrは、卵巣がん疾患啓発プロジェクトを実施しました。
両社の取り組みについて、オイテル株式会社(以下OiTr)の江口 弘樹氏、住本 葵氏とアストラゼネカの詫磨 正史氏に本プロジェクトのきっかけや特徴についてお話を伺いました。

プロジェクト事例

概要
  • 卵巣がんの罹患率が高くなる40~50歳代女性の利用が多い施設を対象に、15秒間のトイレサイネージ広告を配信(商業施設・オフィス・交通機関 計56施設・995台、7月~9月の60日間)
  • 期間中、OiTrを利用した人に対して広告についてのアンケート調査を実施
背景/課題
  • 卵巣がんの罹患数は増えているが、国が推奨する検診がないこともあり、一般的にあまりよく知られていない
  • 初期ではほとんど症状を自覚することはなく、症状が出てきても卵巣がんに特有なものではないため、気づかれない場合も多い
  • 実施した調査から、卵巣がんの基礎知識を持っていると「より早い受診につながる」「罹患した際の治療内容への理解度が高まる」と考えられる
検証結果
  • トイレという個室空間を活用することで、メッセージを届けたい対象へ効果的に卵巣がんを認知してもらうことが可能
  • 広告の効果を測る(行動変容を追う)にはさらなる工夫が必要

女性のヘルスケアにおける不満解消というコンセプトの共有が
プロジェクトの起点になった

――まずプロジェクトの背景を教えてください。

詫磨:アストラゼネカでは、卵巣がん領域において「卵巣がん患者さんの5年生存率を改善する」「患者さんが納得、満足しながら治療できる環境整備をする」という2つのビジョンを掲げ活動しています。しかし、実はこれまでは卵巣がんに罹患された方への情報提供活動が中心で、罹患されていない方向けの疾患啓発活動は行ってきませんでした。その理由として、検診が早期発見や生存率を改善したという明確なエビデンスがないことが挙げられます。国が推奨する卵巣がん検診もなく、それが卵巣がんについてよく知られていない一因と考えています。
一方で、卵巣がんの初期にはほとんど自覚症状がなく、症状が出てきても卵巣がんに特有なものではないため、気づいたときには進行してしまっていたというケースも見られます。患者さんを対象にした調査では、事前に知識があれば「もっと早く受診できたかもしれない」「もっと前向きに治療に臨めたと思う」といった声が聞かれました。そうした声を受けて、卵巣がんについて多くの人に知ってもらうことは早期発見や治療の満足度向上につながるのではないかと考え、疾患啓発に取り組むことになりました。

OiTrインタビュー

――トイレサイネージというアイデアが生まれたきっかけは?

詫磨:社内で行われた卵巣がんチームとi2.JP共催のワークショップです。疾患領域や担当部門を越え、社内の様々な社員が集まり、卵巣がんの疾患啓発について課題やアイデアを話し合うもので、そのときに「トイレの中で広告を出せるといいのでは!?」という案が出ました。広告媒体を考えてトイレサイネージという意見が出たのではなく、女性の一日の行動を思い描きながら「どんなときならよく見てもらえるだろう?」と考えて、生まれてきたアイデアです。
卵巣がんは年間の罹患数が約13,000人といわれています1。テレビCM等で広く訴えかけるより、罹患リスクの高い層に直接発信できるほうが効率的と考えました。卵巣がんは40歳ぐらいから増え始め50~60歳代が好発年齢となるので1、その年代の女性に情報を届けるのにトイレサイネージは適したツールではないかと考え、i2.JPパートナーであるOiTrさんにご相談しました。

江口:トイレサイネージは1対1の空間で広告を視聴してもらうので、認知率が高いのが特徴です。OiTrは女性のみに訴求が可能で、ターゲット層の利用頻度が高い施設を選んで配信できるため、詫磨さんのお話を聞いて、卵巣がんの啓発にマッチした媒体だと思いました。

住本:OiTrは商業施設・学校・オフィス・公共施設などの個室トイレに、生理用ナプキンを常備し無料で提供するサービスです。生理になるタイミングは突然であることが多いですよね。「トイレットペーパーは常備されているのに、なぜ生理用品は常備されていないのか?」という声から生まれたもので、生理による精神的・身体的負担を少しでも軽くしたいという想いから始めました。ナプキンを常備するディスペンサーにサイネージ広告を設置、その広告費によって無料提供を可能にするという事業モデルで、広告への印象がいいことも特徴の一つです。

OiTrサービスイメージ

詫磨:最初にOiTrさんのビジョンやサービスをお聞きして、すごく感動したのをよく覚えています。女性の健康課題に取り組んでいるという点で、卵巣がんの疾患啓発との親和性も高い御社にお願いしたい、と思いました。施設数、閲覧数などの数字ももちろん大切ですが、想いが一致していることがカギだったと思います。

認知してもらうことはできたが、
行動変容を促す・追う方法は今後の課題

――プロジェクトの概要、特徴を教えてください。

住本:施設は関東・関西で卵巣がんの罹患率が高い年齢層に利用が多い商業施設・オフィス・交通機関を選び、そのほかに特徴ある施設として中部国際空港セントレアを入れました。全部で56施設、995台です。

詫磨:約2カ月間にわたり、15秒間の啓発動画を配信しました。小さなディスプレイで、しかも音がない短い動画を作るのはチャレンジングで、社内のクリエイティブチームと毎日のようにディスカッションして作りこみました。行動変容まで促したかったので、短い動画の中に「定期的な婦人科検診で卵巣も確認しましょう」というメッセージを入れこんだのはポイントだったと思います。

江口:アストラゼネカさんのサイト「卵巣がん.jp」にアクセスしてもらうことを一つの目標としたため、サイトのQRコードを表示しましたが、トイレの個室ですからすぐそこでスマホを取り出すことができない人もいます。そこで、同時に「卵巣がん アストラゼネカ」という検索ワードを表示し、それを印象づけて、興味を持って後から調べてもらう仕掛けにしました。

OiTrインタビュー

――難しかったこと、工夫した点は?

詫磨:広告を見た人たちに対するアンケートの設計です。

江口:OiTrのサービスはスマホのアプリを介してご利用いただくので、ナプキンを受け取った人に対してプッシュ通知を送り、アンケートに答えてもらうことが可能です。広告を見た人全員ではなく、ナプキンを受け取った人のみにはなりますが、OOH(Out of home)広告でコンバージョンがとれるのはOiTrの大きな特徴であり、どんな内容にするか、いろいろディスカッションしましたね。

住本:プッシュ通知の回答率は約11%でした。OiTrのアンケートの回答率は8~10%なので、高い回答率と言えます。回答率が今回特に高かったのは、卵巣がんであったり、婦人科検診であったり、女性の健康に関わることについて皆さん興味があったからではないでしょうか。

詫磨:やはりOiTrのサービスと女性の疾患啓発との親和性が高いのかもしれません。アンケート結果を見ると、卵巣がんについて詳しく知らなかった人が約8割でしたから、卵巣がんを認知してもらうという最大の目的は達成できたと思っています。
行動変容に関しては、ナプキンを受け取った日の夜にプッシュ通知を送るため、本当に受診したかどうかまでは追えません。6~7問のアンケートの中で、婦人科へ行き検診を受けようという気持ちになったかどうかを確認できるよう工夫しましたが、なかなか難しかったですね。最終的には「かかりつけの婦人科医がいますか」という質問から、「いる」人に対しては「次の婦人科検診の際に卵巣もみてもらうよう相談しますか」、「いない」人に対しては「卵巣をみてもらうために婦人科検診をしますか」という質問を用意しました。婦人科を受診して相談したいという回答が約8割に上ったので、行動変容を促すという点で一定の効果はあったと考えています。

住本:最近、サイネージに「ナプキンの無料提供を続けるためアンケートにご協力ください」としてQRコードを表示したところ、OiTrのサービスを利用していない人からの回答もありました。理由として「OiTrの取組に協力したい」や「このような活動に興味がある」が多く、そうした人たちは疾患啓発にも興味を持つかもしれません。アンケートの方法はまだまだ工夫の余地がありますね。

OiTrインタビュー

――今回のコラボレーションから学んだことを教えてください。

江口:トイレサイネージを含め、OOH広告は結果を検証するのが難しいという課題感を抱えながらも、今回、例えば「1カ月間に1人当たりが受け取るナプキンの数」などさまざまなデータを追い、そこから仮説を立てていこうとする詫磨さんの考え方や視点は、すごく勉強になりました。

詫磨:「こういうデータとれない?」という質問は何度もしましたよね。データが出せないときでも「そのデータはないが、こういうデータなら出せるかも」というふうに真摯に対応してくださったのは本当にありがたかったです。

江口:やるべきだと思っていたことですし、これだけ深堀りしたことは私自身経験したことがなかったので、大きな学びになりました。

詫磨:嫌がられてないか心配したりもしたので(笑)、プラスの影響を与えていたならうれしいです!

住本:OiTrはフェムテックとしての認知度も高まり、これからは女性のウェルビーイングの向上に取り組んでいきたいと考えているところです。OiTrのサイネージ広告は商材の宣伝がほとんどで、疾患啓発活動は初めてのチャレンジでしたが、こうして実績を出せてうれしいですし、今後の活動に活かせると思っています。

詫磨:行動変容を追う方法はやはり大きな課題ですが、このようなプロジェクトを重ねていくことで、データのとり方、アンケートの方法もブラッシュアップされていきますよね。最初から100点を目指すのではなく、試行錯誤しながらお互いに刺激を受けて、それを次に活かせるのがi2.JPのコラボレーションのいいところだと思います。この手法はターゲットを絞って啓発したい疾患であれば、横展開が可能ですよね。

江口:ディスペンサーの数は2,600台を超え、今後も全国的に拡大していきます。スモールスタートでやってみたいというケースにも適していますので、実験的なプロジェクトも挑戦したいですね。

詫磨:御社のコンセプトやサービスを考えると、やはり女性の健康課題との相性がいいと実感しました。特に女性向けの疾患啓発に今回の手法を活かせればと思います。

※掲載内容は当時のものです。所属等、現在とは異なる場合がございますのであらかじめご了承ください。

※「インフルエンサーを活用した疾患啓発セミナー」卵巣がん疾患啓発プロジェクトの後編はこちらから!

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