コラボ事例
JTB×AZ(後編)

全社プロジェクトを経て
タクシー会社独自のCOPD啓発活動が継続中

※コラボ事例の前編はこちらから

後編では、全社展開の内容と結果、継続展開や今後の課題などをご紹介します。

「症状が出たら受診しよう」と考える層の
受診を促すことが課題

――全社展開の内容、結果の概要を教えてください。

新家:日本交通グループ12社の乗務員5,249名が対象で、そのうちセミナー対象者は1,346名、参加者は988名でした。セミナーやアンケートの内容はパイロット版とほぼ同じです。

石口:ライブ中継の集合視聴、動画の集合視聴・個人視聴の3つの方法で参加していただきましたが、どの方法でも「よく理解できた・理解できた」が9割前後でした1

大古場:私たちが最も注目していた受診については、受講後のアンケートで受診の意向があるとした人が35.0%、1カ月後のアンケートで「受診した」と回答した人は7.9%、そのうち「COPDと診断された」人が60.4%でした1

石口:1カ月後に「これから検査を受けたい」と回答した人もいますが、1カ月以上たってから受診していただけるかというと、おそらく難しいと思います。COPDについて知り、「いつか検査を受けなければ」と考えたけれど、受診に至らなかった人たちが多かったことは今後の大きな課題ですね。

――受診しない理由は?

石口:受診意向がない理由も、受診の意向はあったが受診しなかった理由も、一番は「今症状がない」ことです。「日常生活に支障が出たら受診したい」という人も多かったですね。

新家:行動変容に関わる因子を探るため、アンケートに「検査費用の補助があれば受診するか」「家族とCOPDについて話したか」なども入れ込みましたが、今回の結果を見ると、症状があるかどうかが非常に大きいという印象です。だとすると、いま症状がない人たちにどうすれば自分がCOPDになる未来を想像してもらえるのか?受診勧奨のためには、その工夫が必要だと考えています。

インタビュー写真

――そのほかにアンケートから得られた気づきはありますか?

新家:禁煙・減煙した人が予想以上に多かったですよね。

大古場:パイロットプロジェクトでも喫煙者の約6割が禁煙・減煙したという結果が出ましたが、全社展開でも喫煙者の43.4%が禁煙・減煙していました。セミナーをきっかけに禁煙・減煙しようと考えた人を母数にすると、そのうちの77.8%が実際に行動に移しています(禁煙29.0%、減煙48.8%)。受診勧奨の点で課題が残りましたが、セミナーがなければCOPDのリスクに気づかない可能性が高かった人たちがリスクを知る機会になったという点で効果はあったと考えています。禁煙・減煙も含めると意識変容、行動変容にも一定の効果はあったと言え、その点が日本交通さんにも評価されたと思っています1

――継続実施について教えてください。

新家:22年度で全社展開プロジェクトは終了しましたが、23年度から別の形で継続的に取り組まれています。健康診断の際にCOPD-PSを行い、リスクのある人に動画視聴を促すという日本交通さん独自のCWO主幹の取り組みです。

大古場:市民公開講座など疾患啓発のイベントは「1回やったら終わり」になりがちなことが大きな課題なので、今回のアストラゼネカとの取り組みが終了した後もCOPDについて継続的な取り組みをしていただけないかというお話は早い段階からしていました。全社展開がある程度進んだところで、新家さんと日本交通さんで話し合って継続を決めてくださいました。実現して、すごくうれしいです。

新家:日本交通さんが自社で継続しやすい方法をご相談させていただいた結果、健診を活用することに決まりました。タクシー業界の健診は会場を社内に置き、皆が決まった日時に一斉に受ける形式で行われることが多いためです。ただ医師によるセミナーの実施は難しく、リスクのある方にはアストラゼネカさんのコーポレートサイトにある動画の視聴を促す形になっています。

石口:継続実施に入ってから日本交通さんにヒアリングさせていただきましたが、問題なく実施できているとのことでした。タクシー乗務員は年2回の健康診断が義務付けられているそうで、両方のタイミングで実施していただけることになっています。

積極的に進めてくれる“旗振り役”がいれば
企業のガバナンスがプラスに働く可能性も

インタビュー写真

――コラボを通して感じたお相手の長所、率直な感想を教えてください。

石口:新家さんとは今回のプロジェクトで初めてお会いしたのですが、すごくパワフルだったというか、「一緒に新しいことをやりましょう!」という熱意に動かされた感じでした。新しいことにチャレンジするには勇気も体力も気力もいりますが、「やろう!」「できる!」という気持ちになれました。

新家:観光産業は様々な事業パートナーとの協業で成り立っています。業界で働く人たちの健康づくりに貢献できるこのプロジェクトは、私自身としても、これはやるべきことだ、やりたいという思いが強かったので、それがエネルギーにつながっていたのかもしれません。
私はお互いに初めてのプロジェクトであり、かつ意義が明確で必ず役に立つものだったので、すごく楽しかったです。大変な局面もありましたが、乗務員さんの意識変容、行動変容が見られて本当によかったし、継続展開に至ったのは大きな成果だと思っています。日本交通さんにもアストラゼネカさんにも感謝しています。

――今回の成果を今後のCOPD啓発に生かすことは可能ですか?

大古場:企業で働く人を対象に企業で開催するという手法について、企業のガバナンスがセミナー参加や意識変容、行動変容に影響するのではないかという仮説はポジティブだったと解釈しています。同時に、旗振り役がいるかどうかがカギになることも実感しました。

新家:今回は仲さんが全体のキーパーソンだったと思いますが、パイロット版の担当者の大内さんがしっかり旗を振ってくださったことも大きかったですよね。経営層の意識が高いことは前提として、現場と経営陣をつなぐ部分が重要だというのが今回の学びであり、その意味で、別なところで同様のプロジェクトを実施する際には、新たな工夫が必要になるのかもしれません。
ただ、企業のアブセンティズム、プレゼンティズム、さらにはブランディングの観点から、このような疾患啓発は企業が取り組むべきこと、企業にとってプラスになるものであることは確かです。今後、例えば日本交通さんが中長期的に続けてくださって、離職率が下がる、生産性が上がるといった具体的な数字がもし出てくれば、実績として対外的にアピールできるものになるでしょうし、他の企業も追随する可能性もあるのではないでしょうか。

――今後、i2.JPを通して実現したいことはありますか?

大古場:COPDの疾患啓発には引き続き注力が必要だと思いますし、新しい視点や方法が得られたらとも思っています。今回はタクシー乗務員さんでしたが、対象が変わることで発見があるかもしれません。i2.JPの枠組みを活用して新たなチャンスが得られたらと思います。

新家:私はJTBの強みを生かして、患者さんのエクスペリエンスデザインに何らかの形で貢献できないか考えています。治療中の患者さんがやりたいことの上位に「旅行」がよく挙げられますよね。JTBの意識調査でもそのような結果が出ています。受診・診断の次のステップは「治療継続」になりますが、旅行は治療継続のモチベーションの一つになると思うので、i2.JPのパートナー企業さんとコラボすることによって、患者さんの旅行体験を治療継続につなげるようなことができたらと思います。

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